Designer デザイナー

丸谷博男|Hiroo Maruya

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日本人が持って生まれた、
デザイン力をいかしていきたい。

例えば、日本の茶室。田舎にある農家の朽ち果てた建物に、かつての日本人たちは美を感じ、貴族や大名の屋敷の中にその空間をしつらえました。庭を歩き、季節を愛でてから茶室に入ると、外界から遮断された小さな空間で感じられるのは、光と影、そして静かに流れる空気だけ・・・。このように美しさを抽象化させる日本人の独特の能力を、丸谷氏は「ジャパニーズセンス(j-sense)」と呼び、日本人が持って生まれたデザイン力だと考えています。
その思考は、パナソニックの照明器具シリーズ「HomeArchi(ホームアーキ)」のデザインによく表れています。彼はデザイナーとして20年ほど前から手掛けており、数々の作品は、日本人の微妙な感覚を蘇らせるような「明かりの提案」にこだわる良作ばかり。ダウンライトの光のコントラストを和らげて癒しの空間を演出したり、行灯のように、壁天井にこだわらず宙に浮くような明かりを作ってみたり・・・。照明器具そのものをデザインするのではなく、照明器具が照らしだす明かりのディテールがどのような光と影を作り出すのかということに力を注ぐことで、日本人の生活文化が培ってきた光の可能性を再現しようとしているのです。



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私たちのために、地球のために、
より自然な暮らしを提案。

丸谷氏が「HomeArchi」で明かりのあり方にこだわる背景には、自然を敬う姿勢があります。自然界はすべて非対称であることに着目し、あえて廊下やトイレの照明は中心を避けて設置するなど、一見、常識を逸脱するようなセンスは彼ならでは。この技によって、わずかな光の明暗や陰影が深みある空間を作り出し、人の安らぎやくつろぎを生み出しています。
彼は長年の照明器具デザインでこだわってきた光の豊かさこそが日本の神髄であり、ありのままの自然の姿だと考えるのでしょう。設計する建築デザインにも、こうした精神が色濃く反映されています。風の流れを作って湿度や室温に配慮したり、パブリックスペースとプライベートスペースの間に中間壁を施して、心地よい距離感を保つ設計力は、自然の光や空気を意識した伝統的な日本建築から影響を受けた、彼が描く現代建築の理想なのかもしれません。
彼は今、地球環境に優しい「呼吸する住宅」の研究に取り組んでいます。建築家グループとともに、住宅の温熱環境や壁構造、断熱、熱容量など科学的な視点から実験や研究を重ね、地球環境における建築家の役割を模索しています。「自然とつり合いを持って見られる感性が大事」と話す彼にとって、洞察力や造成力、設備力を兼ね合わせて、よりよい住宅環境を実現することが大きな目標なのです。

丸谷博男

株式会社エーアンドエーセントラルarts and architecture代表
一級建築士
東京芸術大学美術学部建築科非常勤講師
多摩美術大学造形表現学部非常勤講師
j-sence代表

1948年 山梨県に生まれ
1972年 東京芸術大学美術学部建築科卒業
1973年 長野県木曽郡三岳村にて山村建築の実測調査を行いデザインの原点を学ぶ
1974年 同大学院卒業/同大学非常勤講師となる
1975年 奥村昭雄先生の研究室
1985年 この年より現在に至るまで千葉大学工学部建築学科非常勤講師を勤める
1992年 世田谷区梅ヶ丘にモノつくりの拠点「梅ヶ丘アートセンター」を創設
設計事務所とギャラリー、そして世田谷区のまちづくりに関わる
著書 「住まいのアイデアスケッチ集」
「家づくりを成功させる本」
「設備から考える住宅の設計」
「実践木造住宅のディテール」(いづれも彰国社刊)
「男と女の建築家が語る家づくりの物語」(工業調査会刊)