Designer デザイナー

若原一貴|Kazuki Wakahara

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生活にフィットした空間づくりで、
長きにわたり愛着のある居場所をつくる。

美しい空間と豊かな暮らし。それは住む人の感覚的なことであり、同じ空間でも住む人が違えば、感じる思いも異なります。そこで、若原氏は常に自分自身の感覚を照らし合わせながら設計をし、住む人にとって他にはない「居心地のよい場所」を造り上げています。
中でも、キッチンは住む人の価値観がそのまま表れる場所。生活スタイルやものの考え方、趣味、家族構成、そして将来のあり方など、すべてを集約された中心的な部分です。
例えば、夫婦共稼ぎで調理をする時間が少ない家族と、食にこだわってオーガニックな食材を使ったり、ケーキを焼いたりする家族とでは、同じキッチンでも捉え方が違うと彼は考えています。

時間がない家族に調理の楽しさを伝えるようなキッチンで「食生活を豊かにしましょう」と説くのではなく、短時間でも使いやすいキッチンを提案することで、より生活にフィットする空間を創り出す。
またお子さんがいる家庭では、やがてその子が母親と一緒にキッチンに立つことを想像しながら設計する。住む人の過去から今を知り、未来をイメージしながら、空間の質を向上させることで、やがてそれが愛着を持てる空間となることを願っているのです。



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“物語”を感じる仕掛けをつくり、
住まいに新しいストーリーがはじまる。

若原氏のWebサイトに訪れると『光がつくる“居場所”、素材がもたらす“居心地”』という設計コンセプトに興味をひかれます。住む人の生活にフィットする設計を考えながらも、建築としての主体性を大切にする姿勢がうかがわれる言葉です。彼が設計する住宅では、白い壁が多いのが特徴。それは光をテーマに、光と場所の関係性を造り出したいと考える設計を邪魔することなく、また狭小住宅でも広がりを持たせる効果があります。さらに最近では素材に注目し、漆喰に異素材を混ぜ合わせて壁に塗るなど、新たな工夫に取り組んでいます。例えば、漆喰に大谷石を混ぜ合わせた壁は光の加減によってほのかなグリーンに見え、光の表情の豊かさが楽しめます。しかし、この壁がもたらす効果がそれだけではありませんでした。彼はそこに「物語がある」と言います。実はこの壁をしつらえた東久留米の住宅の近くには、自由学園があり、建物には古くから大谷石が使われていたのです。漆喰に混ざった大谷石が光によって表情を変えながら、その地ならではの物語を語り、住む人の思いと重なる・・・。そんな仕掛けが施されていたのです
そうした一方で彼は「当然、建築とは“感覚”や“感性”だけで出来上がるものではない」と語り、工法や環境、予算など、あらゆる条件を満たしながら、それ以上に人の感覚に訴えかけるような意志を持った空間づくりを心掛けています。

若原一貴

一級建築士事務所 株式会社若原アトリエ 代表取締役

1971年 東京都生まれ
1994年 日本大学芸術学部卒業
1994年 横河設計工房入社
2000年 株式会社若原アトリエを設立
2003年 中国南京にて国際設計コンペ最優秀デザイン賞受賞
2003年 『あがり屋敷の家』にて 第7回WOOD ONE実施作品コンペ入選
2008年 『四季の森デンタルクリニック』にて 第11回 木材活用コンクール部門賞(第一部門)賞
2009年 『小日向の仕事場』にて第30回 INAXデザインコンテスト入賞